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         マニュアルは大事である。
特に社会人(さらには日本人)にとっては、周囲から浮かないために、
出る杭とならないように、不可欠なものである。
現代社会人にとってマニュアルが必要不可欠なものであるように、
過去の日本―――サムライ―――にとってマニュアルは存在したのだろうか。

時代物のドラマ・映画などを見ていると、往来で刀が当たれば切りあいが始まり、
殿中で刀を抜けば即切腹など、プライドの高い職業(?)人たちの社会は、現代よりも厳格に思える。

本書武士マニュアルはそんな疑問を解決してくれるものである。

全部で6つのマニュアルをそれぞれ紹介しており、
ざっくり分けると、
サラリーマン武士向けマニュアル
剣士向けマニュアル
心構えのマニュアル
切腹のマニュアル

といったところだろうか。

サラリーマン武士向けマニュアル「番衆狂歌」は、
元禄時代以降の江戸中期で良く読まれていたそうである。
元禄時代というと、Wikipedia調べでは、1688年移行であるから、
徳川幕府が始まって100年程。天下泰平の時代である。
ちなみに赤穂浪士の事件もこの時代。(1701年~1703年)

「御番所の 大用場へは燈無く 下駄にてすへる 用心せよ」
というように、トイレに入るときの心構えや、
病欠の届け出、病気になった時の早退方法、療養中の恰好、あいさつの仕方等々、
サラリーマン武士として必要なアレコレをマニュアル化している。

その一方で、剣士向けのマニュアル、「卜伝百首」、「志塵集」がある。
卜伝百首は、剣聖とも言われた、塚原卜伝が残したものとされ、
槍(鑓)、刀の鍔や持ち手に関する諸注意(皮は滑るから、紐にすべきだ)
馬は、小さいものではなく、気性が荒くても大きな馬が良い、等と、
武器・武具・馬に関するマニュアルが詠まれている。


「志塵集」としては、
人を切った後の刀は、脂がついているから、手入れせねばならない。
夜は行燈の光で障子に影が映るから注意せねばならない、
戦争に持っていく兵糧としては何がある、といった様に、
普段は街中で生活をしている武士のためのマニュアル、という印象を受けた。

さて、そして切腹マニュアルたる「自刃録」。
切腹を「するための」マニュアルではなく、「させるための」マニュアルであることに注意。
つまりは、介錯人のためのマニュアルである。
勿論、作法も記載されてはいるが、如何に相手に戸惑いを与えず、切腹させるか、
介錯をする時のポイント、といったつつがない執行のためのノウハウが記載されている。
意外なことに、切腹というと、武士にはつきものの様であった印象を受けるが、
実は、先に挙げた「番衆狂歌」が愛読された元禄時代等では
切腹のやり方を知る武士は少なく、
介錯人がその都度作法を指示していた
―――切腹を恐れず、討ち入りを果たしたあの赤穂浪士たちでさえ、
   「ところで切腹とはどうやるのだ?」という状態であった―――
というのは軽い驚きだ。

勿論、本書、武士マニュアルは非常に血なまぐさい内容がそこかしこに記載されている。
くれぐれも注意して読んでもらいたい。



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